第5回 卒業論文レジュメ(2002/7/15)
「高齢者向け住宅対策」 国際学部国際社会学科4年 佐藤美佐子
前回までは、介護保険制度の住宅改修について、どういうもので、どんなトラブルが起こっているかといったことについて調べた。これについてだけでも十分興味深く、もっとじっくり調べてみたいとも思うが、「高齢者のための住環境整備」という視点でやっていきたいと思っているので、もう少し広げてみようと思った。よって、今回は、「高齢者向けの住宅対策」がどのように行われているのかについて調べてみた。
高齢者向けの住宅改修
住宅改修に関する相談を受け、助言等を行っている機関や事業
・高齢者総合相談センター(シルバー110番)における相談事業:高齢者やその家族が抱える一般的な悩み事から、法律や家の増改築に関することまで専門家が無料で相談に応じてくれる。センターは各都道府県に1ヵ所ずつ設置されている。電話による相談のほか、面接も行っている。
(栃木県・「栃木県高齢者総合センター」 宇都宮市駒生町3337−1とちぎ健康の森2階 0286−27−1122)
・リフォームヘルパー事業:1993年度〜。在宅の要介護高齢者のいる世帯を対象に、高齢者の居室などの改造についての相談や助言、施工者の紹介や改良内容についての業者への連絡・調整、施工後の評価や利用対象者への指導を、地域の福祉、保健・医療、建築関係などの各職種のチームで行う事業。2000年度から市町村が行っている介護予防・生活支援事業では、住宅改修支援事業として位置付けられている。
*住宅の改修に関しては、高齢者総合相談センターのほか、在宅介護支援センターや介護実習・普及センター、市町村窓口、住宅課などに相談することができる。そこでは、リフォームヘルパー、高齢者住宅に関する専門相談員、マンションリフォームマネジャー、増改築相談員、高齢者住宅設計の経験を持つ建築士などが対応してくれることもある。
(東京商工会議所 福祉住環境コーディネーター試験 3級テキストより)
・在宅介護支援センター:在宅介護に関する相談・助言、必要な公的サービスの利用手続きの便宜などを行う。夜間も含め24時間の対応が可能。
・介護実習・普及センター:家族介護者への介護技術や知識の普及を行う。都道府県、指定都市が設置主体。
・マンションリフォームマネジャー:1992年創設。主としてマンションの専有部分について、施主の要望を的確に把握した上で、マンション特有の制約条件等に十分配慮しつつ、リフォームの内容の企画提案等を行うとともに、工事実施に際して管理組合、近隣住戸、施工業者および施主に対する調整、指導、助言を行い、トラブルのない良質なマンションリフォームの実施を担保できる能力を認められた者。2002年4月現在、約6000人が登録。
・増改築相談員:1985年、建設省(現 国土交通省)の指導のもとに創設された。@大工等として住宅建築の現場に10年以上携わっている者、A(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが企画したカリキュラムの研修会に参加し、考査に合格した者――の条件を満たし、センターに増改築相談員として登録している者。顧客のための相談業務(一般消費者のためのコンサルティング業務)を行うとともに、必要に応じて積極的に助言ないし援助を行うことにより住宅リフォームの健全な普及を促進する。2000年4月現在、13042人が登録。
(マンションリフォームマネジャー、増改築相談員については、住宅リフォームセンターhttp://www.chord.or.jp/reform/index.htm より)
・・・住宅改修に関する相談を受けてくれる機関はあり、住宅改修に対応できる専門家もいないわけではない。しかし、これらの機関、有資格者が、住宅改修の分野でうまく活用されているのだろうか? という疑問を持った。
高齢者向け住宅の確保(「社会保障入門(平成13年度版)」より)
高齢者が安心して生活することのできる住宅の確保のための施策
・ケアハウス:1989年度〜。入居者に対する助言・相談、食事、入浴、緊急時の対応などにより、自立した生活を確保できるように工夫された軽費老人ホーム。
・シルバーハウジング:公的住宅供給主体(地方公共団体、都市基盤整備公団、地方住宅供給公社)が、手すり、緊急通報システム設置等の設備・仕様が施された公共賃貸住宅を供給するとともに、「ライフサポートアドバイザー」を派遣し、入居高齢者に対する生活相談・指導、安否の確認、緊急時の対応、一時的家事援助、関係機関との連絡等を行うもの。
・高齢者向け優良賃貸住宅:高齢者単身・夫婦世帯等向けのバリアフリー化された優良な賃貸住宅の供給を促進するため、民間事業者等による高齢者向け優良賃貸住宅の建設や改良等に対し、国・地方公共団体が補助を行っているもの。
*高齢者のための住宅施策は、厚生労働省と国土交通省によって行われている。
・・・普及にはまだ時間がかかりそうだ。ただ、これらの居住施設に関する情報が少ないように思う。整備を進めるとともに、このような施設に関する情報提供も行っていく必要があるのではないか。
栃木県の取り組み
高齢者向けの住宅対策として、栃木県がどういうことを行っていこうと考えているのかについて、「とちぎ21世紀プラン」
(http://www.pref.tochigi.jp/newplan/plan21/index.html)を調べてみた。
施策411:良好な住まい・住環境づくり
→バリアフリー化された高齢者向け公的住宅の確保
・取り組み
子育て・高齢世帯のための住宅づくり
子育て・高齢世帯に配慮した、ゆとりあるバリアフリー化した公営住宅への再生
公営住宅等を補完する優良な民間型住宅の供給
子育て・高齢世帯が交流できる公的住宅の供給
・具体的には・・・
耐久・バリアフリー等住宅の普及
公営住宅のバリアフリーへの改善
特定優良賃貸住宅の供給促進
高齢者向け優良賃貸住宅の供給促進
シルバーハウジングの整備促進 等
・・・計画は、2001年に策定された。よって、まだ実現したものは多くないとは思うが、どれだけ実行されているのか調べてみたいと思った。
今後の進め方
夏休みには、もっといろいろな資料をあたり、それを整理し、卒論の方向性を明確にしていきたい。情報収集をするなかで感じたこと、疑問点などを行政(宇都宮市など)や民間業者など、高齢者のための住環境整備に関わっているところに話を聞きに行き、現状を知ることも必要だと思う。